立 ち 方

 剣道の基本というと、「構え」や「足さばき」を連想される方が多いと思います。確かに、それらも重要なのですが、その前に、剣道の姿勢や動作以前の基礎を見直す必要があります。ここでは「立ち方」について説明します。

 日ごろの「立ち方」は構えの基礎となります。皆さんは、「立ち方」を工夫されたことはおありでしょうか。合理的な身体操作とは、簡単に言うとできるだけ自分の力を使わないで動作することです。立つときも同様です。感覚的にはゼロ(全く筋力を使っていない感覚)で立ちたいわけです。

 しかしながら、私達は学校などで、しっかり立つことを教えられてきました。集団訓練などで、股関節や腰を固めて、踏ん張った感覚で立つことを指導され、それが身についています。そして、その「立ち方」が正しいと理解している方が多いのです。

 左の2枚の写真を見てください。モデルは私です。自分の写真を見るというのも、恥ずかしいものですが、姿勢の特徴がよく撮れています。

 上段・下段、どちらの姿勢が良い姿勢なのでしょう?。できれば、ご自分の「立ち方」を鏡で確認してください。できれば、写真をお撮りになるといいと思います。

 上の写真は、私が合理的な身体操作に取り組む前まで、正しいと錯覚していた姿勢です。長年、このように立ってきました。そして、ほとんどの方がこのように立っています。
 
 この写真では、左右の足は多少開いて立っているのですが、あごを引き気味にして、胸を張り、腰を前方へ入れて、下腹を出して丹田に力を入れるようにしています。一見、とても堂々としています。しかし、このような「立ち方」は、膝が伸び、骨盤が固定されています。とても動きにくい姿勢なのです。私達は、知らず知らずのうちに、このような「立ち方」になっています。

 拙書「本当のナンバ常歩」にも記しましたが、私は、剣道の試合場で、審判の先生方の「立ち方」を拝見します。 剣道の先生方、ほぼ全員がこのような「立ち方」をされています。

 皆さんも、是非試合場で、「立ち方」の観察をしてみてください。慣れてくると、一目でその方の姿勢の特徴が分かるようになります。
 
 さて、下の写真は現在の私の「立ち方」です。すでに述べたように、合理的に立つということは、可能な限り筋力を使わないで立つということです。そのためには、地面と垂直に立つことが大切です。2枚の写真に頭頂から垂線を下ろしてみてください。一目瞭然であると思います。下の写真は、ほぼ垂直に骨格を保って立っています。

 上の「立ち方」から、骨盤を前傾させてくると下の「立ち方」になってきます。骨盤を前傾させるというのが分かりにくい方は、多少膝を曲げて、お尻を後に引くようにします。そうすると、重心が踵の方に移ってくると思います。膝を少し屈伸させて、最も抵抗がない骨盤の位置を自分で探します。

 私もそうでしたが、皆さんこの姿勢をはじめてとると、前かがみになって、頼りない姿勢に感じます。とても良い姿勢とは思えません。しかし、鏡を見てみたり、写真を撮ってみると、体全体はまっすぐ立って、とても自然な姿勢に驚かされます。前かがみに感じるのは、骨盤が前傾したためです。

 合理的身体操作に基づいた「剣道」の基礎は、この「立ち方」にあります。日ごろ何気なく立っている時から、「立ち方」の稽古をするといいと思います。

 また、今流行している「バランスボード」に乗るのもいい方法です。「バランスボード」も色々なものが市販されていますが、骨盤の理想的な位置を見つけると、長時間乗ることができるようになります。

 常歩剣道の習得は、この「立ち方」からはじまります。